※ 2015年分を以て掲載を終了します。
※ 誤字、表記違い等に気づかれましたら、ご連絡ください。

「櫻草」第158號掲載
2015年11・12月號
虹の尾の消えし端山の夕明り | 岩渕 如雨 |
堀跡の水草紅葉夕明り | |
夕明り丘ゆるやかに蕎麦の花 | |
老年になりても嬉し雪遊び | 奥山 游悦 |
黄落のドイツの古城荒るゝまま | |
吹かれつつ海を見ている秋桜 | |
河豚鍋をたらふく食ふた小倉思ふ | 武蔵 弁慶 |
小鳥来るみやげはいつも鳩サブレー | |
スーパーの沢庵漬や加減よし | |
<五日会近詠> | |
上毛の雷神おとなし実る秋 | 合田三鬼堂 |
道端に育ち鶏頭の孤独かな | |
谿聲句繰り返し読む長き夜 | |
晩秋や高崎旨きお切り込み | |
手相見の携帯電話秋寒し |

「櫻草」第157號掲載
2015年9・10月號
空欄の多き手帳や降り月 | 岩渕 如雨 |
憂きことの新酒に混り酔ひはやし | |
塾の子の気になる窓の秋灯 | |
天の川無数の命浮かべをり | 奥山 游悦 |
探し当て荷風の墓に女郎花 | |
虫飼ひて人の身勝手思ひ知る | |
秋空や雲なき山河見つめたり | 武蔵 弁慶 |
ひぐらしの哀調帯びて鳴きにけり | |
水澄みて我が心まで清めたり | |
<五日会近詠> | |
一門の剣士揃うて舟遊び | 合田三鬼堂 |
業火耐え七十年や夏木立 | |
湖に焼いた喉を聞かせる盆櫓 | |
谿聲師の論文読みゐる秋燈下 | |
老いてなほ親子の微笑み実る秋 |

「櫻草」第156號掲載
2015年7・8月號
ふるさとを望む啄木像白雨 | 岩渕 如雨 |
夏祭妻もみちのく育ちなる | |
夏草を乗せて寺門の屋根高き | |
打水の音も大地に吸ひ取られ | 奥山 游悦 |
湯上りの汗ひくまでの散歩かな | |
鰻食ぶ八十路と見えぬ恩師かな | |
爆買ひの民が群がる夏の蝶 | 武蔵 弁慶 |
本堂の廊下びしびし跣かな | |
安全を神に祈りて山開 | |
<五日会近詠> | |
女房の笑顔も見ている夏芝居 | 合田三鬼堂 |
半球に生命納めん天道虫 | |
足の痛みすこしやはらぐ夏に入る | |
青田続く車窓の外はめぐみ雨 | |
鬼城句英訳者を悼む | |
君ゆくや降り出しさうな夏至の空 |

「櫻草」第155號掲載
2015年5・6月號
十薬や川面にあふれ光りたり | 武蔵 弁慶 |
半夏生竹馬の友と歓談す | |
吉田邸人の溢れて夏めく日 | |
子ら去りぬ小公園の夕薄暑 | 岩渕 如雨 |
風湿る一人の夜の冷奴 | |
級友の変らぬ仕種宿浴衣 | |
いつの間に影の深さよ夏木立 | 奥山 游悦 |
合唱の一音下がる桜桃忌 | |
人生の節目ふし目に雲の峰 | |
<五日会近詠> | |
桜咲く標準木も年老いて | 合田三鬼堂 |
玉砕の兄悼みをり春の行く | |
鬼城の句座右に積みし五月可南 | |
鬼城の書くりかへし観る五六月 | |
大通りリラの花咲く同期会 |

「櫻草」第154號掲載
2015年3・4月號
雛祭病める友にもじつくりと | 武蔵 弁慶 |
梅を見に熱海の坂を登りけり | |
海鳴りに早やとせかされ梅の花 | |
犬を曳く人を犬引く花の道 | 岩渕 如雨 |
花明り水面に溶けて川明り | |
音遠く尾を打つ鯉や花明り | |
流氷のぎしぎしと泣くオホーツク | 奥山 游悦 |
ビル街を赤く染めたる春夕焼 | |
知りつつも毎度のコース花疲 | |
<五日会近詠> | |
春来るや美しき国はじまりぬ | 合田三鬼堂 |
春風邪におとなしくをり三日ほど | |
春雪に足を取られる坂の街 | |
花便り抑へに抑へ旅心 | |
賑はひは隣の寺の潅仏会 |

「櫻草」第153號掲載
2015年1・2月號
老紳士ひとりコーヒー小春かな | 武蔵 弁慶 |
篝火や神楽激しく燃え上がる | |
白菜は空しきものか美味があり | |
無為の日に慣るるは恐し十二月 | 岩渕 如雨 |
独り言妻もまた増え初旦 | |
梅の枝の生き返る雨初天神 | |
しんしんと雪降りやまぬ漁師町 | 奥山 游悦 |
どよもすや松明走るお水取り | |
初釜の香炉の羊つつましく |

「櫻草」第152號掲載
2014年11・12月號
好天に布団干してる保育園 | 武蔵 弁慶 |
ふるさとで心身癒す冬露天 | |
凩や麗し並ぶ六地蔵 | |
秋扇開き畳みて言はぬまま | 岩渕 如雨 |
はやばやと無月と決めて酒仕度 | |
旅十日日々に色濃く草紅葉 | |
新海苔と太く書きたるお品書 | 奥山 游悦 |
マフラーに顎を埋めて黙考す | |
炉語りや自慢の魚拓拡げ見せ |

「櫻草」第151號掲載
2014年9・10月號
物忘れの多き日々や秋日和 | 武蔵 弁慶 |
老鶯や山また山と独り占め | |
駄駄っこがただ駄駄こねる夜店かな | |
驟雨止むや皆黄のコート下校の子 | 岩渕 如雨 |
暖簾吹く風ゆるき夜の冷し酒 | |
友の死や拡がり崩るいわし雲 | |
クルーズ船片手伸ばせば天の川 | 奥山 游悦 |
ふいと来てついと飛び去る蜻蛉かな | |
白萩や司法試験を目指した日 |

「櫻草」第150號掲載
2014年7・8月號
蟻われを噛みて命を落としけり | 岩渕 如雨 |
夏風の霊たまに等しく回向院 | |
他の草を制し墓守もる夏薊 | |
北国の夜はもの悲し遠花火 | 奥山 游悦 |
地獄絵も語り継ぐべし長崎忌 | |
新涼やきりりと弓を引き絞り | |
地下鉄や淑女の白き夏帽子 | 武蔵 弁慶 |
泥だらけ母と田植ゑし少年期 | |
炎天や赤いかぶりの六地蔵 |

「櫻草」第149號掲載
2014年5・6月號
九天の色を映してしゃぼん玉 | 岩渕 如雨 |
花過ぎていつもの宿に戻りけり | |
ちびつ子の届かぬやうに藤垂れり | |
古代よりこの貌自慢山椒魚 | 奥山 游悦 |
みどり児の香が先にくる青嵐 | |
一里行き半里戻りて山法師 | |
春の川鳥がボールと遊びけり | 武蔵 弁慶 |
春一番一番ながら疎ましく | |
梅を見に熱海の坂を登りけり |

「櫻草」第148號掲載
2014年3・4月號
くつきりと隣家の影や春の霜 | 岩渕 如雨 |
それぞれに神宿る杉春浅し | |
老杉に耳当て聴かむ春の音 | |
学び舎に藤棚ありし昭和かな | 奥山 游悦 |
五十年前の船旅陽炎へり | |
ゆつくりとワイパー動く春の雪 | |
雪国の素朴な味は川魚 | 武蔵 弁慶 |
冬の野に鈴なり残る赤い柿 | |
一本のペンとマララの春を待つ |

「櫻草」第147號掲載
2014年1・2月號
食材の偽装どこまで枯蟷螂 | 武蔵 弁慶 |
木枯しや英世の母の手紙文 | |
無骨者冬の銀座を闊歩する | |
寒の風起ちて日陰る母忌日 | 岩渕 如雨 |
春立つや常と変らぬ南部富士 | |
春立つや土には猫の抜けし跡 | |
参道にせまる暮色や散落葉 | 奥山 游悦 |
田舎バスゆつくり来たる小春かな | |
クリスマスローズの奥に君の笑み | |

「櫻草」第146號掲載
2013年11・12月號
懸命に職責励む案山子かな | 武蔵 弁慶 |
ボイジャーの脱出成功鱗雲 | |
露草や敬愛の人今は亡き | |
友居りし下宿の窓のうろこ雲 | 岩渕 如雨 |
二冊目はもみぢ葉で終ふ朱印帳 | |
川筋の細り魚見ぬ暮の秋 | |
干鮭を食ひちぎる歯ぞ生きるため | 奥山 游悦 |
身に入むや恩師の声の変はらざる | |
一隅に動くものあり寒雀 | |

「櫻草」第145號掲載
2013年9・10月號
書に倦みて籐椅子に身を委ねたり | 武蔵 弁慶 |
山清水五臓六腑に染み渡る | |
老鶯や最後の力出し続け | |
骨撮す日の蟻鈍し杖の先 | 岩渕 如雨 |
傷痕をほめられ汗の松葉杖 | |
百日紅癒えなばどこに赴かむ | |
人の世は短きがよし露の玉 | 奥山 游悦 |
百本に百人の技菊花展 | |
湯上りの伊香保の宿に秋の風 | |

「櫻草」第144號掲載
2013年7・8月號
みちのくもやつと水張り田植前 | 武蔵 弁慶 |
若葉風心の扉開けさす | |
ででむしの歩幅に合はせ歩きたし | |
我病むと小さく添へて夏見舞 | 岩渕 如雨 |
越前の結夏の寺の木霊かな | |
放射線照射始めし原爆忌 | |
古民家の引き立て役の渋団扇 | 奥山 游悦 |
古代よりこの貌が武器山椒魚 | |
知る顔も呑みこまれゆく踊の輪 |

「櫻草」第143號掲載
2013年5・6月號
PM2・5汚染を追ふや春の塵 | 武蔵 弁慶 |
畦青む會津盆地は靄の中 | |
白梅の香り引き立つ顕徳碑 | |
よみがへる命の松や浜の春 | 岩渕 如雨 |
蕊踏むや佐保姫通り抜けし道 | |
何か始めよと催促春の雷 | |
球児らの声は途切れず青嵐 | 奥山 游悦 |
夏来るシニアコーラス意気高し | |
新緑の眩しすぎるや老いの身に | |

「櫻草」第142號掲載
2013年3・4月號
寒梅に恋のときめき感じをり | 武蔵 弁慶 |
雪降つて墨絵の世界なりにけり | |
鳥食はぬ柿鈴なりに雪被る | |
啓蟄や白壁眩し地酒蔵 | 岩渕 如雨 |
春の夜の一献に笑み幼な顔 | |
踏み跡を振返りつつ青き踏む | |
春一番身体斜めに皆歩き | 奥山 游悦 |
老妻の声は少女や磯遊び | |
手術後の視界を横ぎる初つばめ | |

「櫻草」第141號掲載
2013年1・2月號
雪吊の難儀とうとう友メール | 武蔵 弁慶 |
人まばら波止場もやつと冬に入る | |
老いてなほ友と激論寒波来る | |
初春や朱盃に供ふ越後酒 | 岩渕 如雨 |
身の内に確かな傷み寒に入る | |
麦の畝乾く匂ひや冬ぬくし | |
冬の海暮れて釣竿しまひけり | 奥山 游悦 |
一隅に身を寄せ合ひて寒雀 | |
何ごともなくて終りぬ三ケ日 | |

「櫻草」第140號掲載
2012年11・12月號
馬下し無人の駅や花芒 | 武蔵 弁慶 |
広瀬川変はらぬ流れこぼれ萩 | |
身に入むや婆が爺の手を引きつつ | |
秋の日の腑抜けのやうに昏れにけり | 岩渕 如雨 |
露葎裾しつぽりと子の帰る | |
京路地に傾き迫る紅葉山 | |
外出の防備万端冬来る | 奥山 游悦 |
鬼ごつこやめて風花追ひかける | |
湯豆腐を囲む仲間の顔近し |

「櫻草」第139號掲載
2012年9・10月號
あぶら蝉さうざうしくもなつかしき | 岩渕 如雨 |
退院日まづは安堵の桃啜る | |
秋蜂ははたして悲し病み居れば | |
ベランダの一隅からも虫の声 | 奥山 游悦 |
職退きて古典にふける秋思かな | |
秋めくや朝の体操長袖に | |
祖父祖母が孫と遊ぶや蓮の池 | 武蔵 弁慶 |
下駄履きの隠居扇子をおもむろに | |
耐え切れぬいじめの横行夏の風邪 |

「櫻草」第138號掲載
2012年7・8月號
鳴き誇る夏鶯や早目覚 | 岩渕 如雨 |
酢の強き心太おくゴルフ茶屋 | |
ひかへめに浄土の色を大賀蓮 | |
百日紅愛せし友の今は亡き | 奥山 游悦 |
出航を待つ桟橋に秋の虹 | |
魚市場紺一色の秋刀魚かな | |
片蔭や明治の名残り丸の内 | 武蔵 弁慶 |
加波山の奉灯傾ぐ夏木立 | |
ぼんぼりのやうに灯るやじやがの花 |

「櫻草」第137號掲載
2012年5・6月號
空を見て恥ずかしさうに山笑ふ | 武蔵 弁慶 |
被災地の在りし日偲ぶ花祭 | |
鉞の金時山にさくらかな | |
「終焉の地」碑なき啄木百年忌 | 岩渕 如雨 |
大三角西に残れる朧かな | |
二十日過ぎ腫れ退く遅日酒少し | |
恐竜に夢中の子らよ柏餅 | 奥山 游悦 |
墨東の塔のお目見え風薫る | |
麦秋や高齢過疎の無人駅 |

「櫻草」第136號掲載
2012年3・4月號
日向ぼこ一茶の句集懐に | 武蔵 弁慶 |
裸木や三角形のシルエット | |
返り花我が青春の戻らざる | |
己こそ己の寄る辺涅槃かな | 岩渕 如雨 |
流亡の仮設にしげき春の雪 | |
みちのくの破船の海辺春遅し | |
津波来し沖の船影陽炎へり | 奥山 游悦 |
折り紙に夢中の老母風光る | |
釣糸のかすかに引きて水温む |

「櫻草」第135號</h1>
2012年1・2月號
雪吊や瓦の赤き鶴ヶ城 | 武蔵 弁慶 |
貸し借りもなきが幸せ年の暮 | |
松蔭が越えしとうげや雪霏霏と | |
樹々はいまひとりになりぬ落葉径 | 岩渕 如雨 |
終ひまで皆既月食湯ざめかな | |
温め酒微酔たちまち柳都かな | |
下萌や新居の土地の測量図 | 奥山 游悦 |
外回り終へて囲むはおでん鍋 | |
ビルの群れ墓のごと見ゆ雪景色 |

「櫻草」第134號掲載
2011年11・12月號
沢庵の遺徳偲んで大根引き | 武蔵 弁慶 |
和蝋燭癒しの灯や秋の夜 | |
秋祭走馬灯のごと甦る | |
較べみてひとり頷く古酒新酒 | 岩渕 如雨 |
我生れし震災の地の新酒かな | |
なみなみの盃置きしまま今年酒 |

「櫻草」第133號掲載
2011年9・10月號
新盆を迎へず御霊漂へる | 武蔵 弁慶 |
スサノオの無念を晴らす夏祓い | |
湯の川の晶子の歌碑やあめんぼう | |
小夜嵐預けてありぬ傘と猪口 | 岩渕 如雨 |
虫の音の満ちくる宵や酒一壷 | |
この人も病の話温め酒 |

「櫻草」第132號掲載
2011年7・8月號
被災地に鳴き砂生きる夏の海 | 武蔵 弁慶 |
被災地の街を忘れぬ夏燕 | |
炎天下子規が遊びし草球場 | |
ひそと鳴る南部風鈴新仏 | 岩渕 如雨 |
見覚えのあるジャワサラサ更衣 | |
遅れ咲く矢車の花青柳町 |

「櫻草」第131號掲載
2011年5・6月號
行く人の軽きよそほひ朝桜 | 岩渕 如雨 |
日陰ればひときわは明き花筏 | |
咲き満ちてなほ静かなり夕桜 | |
被災地の健やか願ふ鯉のぼり | 武蔵 弁慶 |
花咲いて元気もらへる震災地 | |
仮設所に「故郷の唄」月朧 |

「櫻草」第130號掲載
2011年3・4月號
畦を塗る休み休みの爺ひとり | 岩渕 如雨 |
貝殻の砂を洗ひて春の雨 | |
旅行書を並べ替へけり西行忌 | |
人生の下書きはなし筆始 | 武蔵 弁慶 |
どか雪を掻き分け家を探しけり | |
枝垂れ梅赤い頭巾の六地蔵 |

「櫻草」第129號掲載
2011年1・2月號
あかつきや希望を灯す冬の空 | 武蔵 弁慶 |
長閑さや上野の山に南州立つ | |
友逝きて心痛の日々虎落笛 | |
ひつそりと時雨の下の足湯かな | 岩渕 如雨 |
空風にいよよさえざえ軍星 | |
幼顔如何になりしや賀状書く |

「櫻草」第128號掲載
2010年11・12月號
大学に道祖神あり彼岸花 | 武蔵 弁慶 |
じやがいもを頬張る子らの笑顔かな | |
初老の紳士呼びかけ赤い羽根 | |
郷に来て待てば小雨の後の月 | 岩渕 如雨 |
駅頭に花売る灯後の月 | |
猫は尾を立てて震はす後の月 |

「櫻草」第127號掲載
2010年9・10月號
雲の峰ダム湖見下ろす過疎の里 | 武蔵 弁慶 |
かなかなの朝夕鳴きてすぐ熄みぬ | |
鬼灯や親子がラジオ聞いたころ | |
焼ける道こそともせずに枇杷枯葉 | 岩渕 如雨 |
托鉢の裾を返して秋立てり | |
駅で買ふだるま弁当鬼城の忌 |

「櫻草」第126號掲載
2010年7・8月號
青蘆に若き時代を回想す | 武蔵 弁慶 |
荒梅雨や普天間基地のブーメラン | |
一昔人手をかけて青田かな | |
蟻の道何処に続く墓苑かな | 岩渕 如雨 |
立葵背筋伸びたる父なりき | |
北空に父母の御霊や雲の峰 |

「櫻草」第125號掲載
2010年5・6月號
赤い靴うつむく少女春うらら | 武蔵 弁慶 |
狭き川流れにまかせ根白草 | |
櫻舞ふ空から母の諭す声 | |
分譲の旗立つ道や花水木 | 岩渕 如雨 |
ラジオの音夢に入込む朝寝かな | |
転入の子もふたりゐて花まつり |

「櫻草」第124號掲載
2010年3・4月號
曽我の梅三万五千の白さなり | 武蔵 弁慶 |
流鏑馬や古式豊かに曽我の梅 | |
雲翳の大気を吸つて梅白き | |
物落つる音のみありて冴え返る | 岩渕 如雨 |
啓蟄の日の土塊を輝かす | |
やや大き盃選りて余寒かな |

「櫻草」第123號掲載
2010年1・2月號
京 都 小 野 ・ 随 心 院 | |
小野里に老いし小町や散紅葉 | 岩渕 如雨 |
手袋を着けたるままの別れかな | |
明日帰る子に残しおく寒卵 | |
残り柿むくどり一斉食べつくす | 武蔵 弁慶 |
幼年の記憶鮮やか冬浅し | |
挫けない心育てる吹雪かな |

「櫻草」第122號掲載
2009年11・12月號
卒壽にて初めて近き山紅葉 | 岩渕 如雨 |
静もれる老人施設穂垂る稲 | |
身に入むや更地となりし父母の家 | |
乗鞍の山肌飾る紅葉かな | 武蔵 弁慶 |
山紅葉各々語るバスの中 | |
乗鞍の崖つ縁に立ち秋を知る |

「櫻草」第121號掲載
2009年9・10月號
無罪得し友にまづ書く夏見舞 | 岩渕 如雨 |
夏痩せてことば優しくなりにけり | |
北空に父母の御霊や雲の峰 | |
夏野菜娘に送り礼電話 | 武蔵 弁慶 |
野天風呂波濤の響き蝉時雨 | |
華やかな料亭廃墟夏の草 |

「櫻草」第120號掲載
2009年7・8月號
農民の蜂起し原っぱ青嵐 | 武蔵 弁慶 |
あじさいや集団疎開寺の井戸 | |
小学校喚声少し夏に入る | |
丸窓に子の頬杖や杜若 | 岩渕 如雨 |
旧友の歩も緩みをり河鹿啼く | |
風の音を伝へてなほる大賀蓮 | |
精霊のさ迷う中へ森林浴 | 小川 修人 |
万緑に溶けいくごとし遠電車 | |
青嵐朴の葉先の痛ましさ | |
一生を牡丹と過しおうなかな | 合田三鬼堂 |
失うて緑陰に眠る都会かな | |
浮雲の子規を慕いて流る夏 |

「櫻草」第119號掲載
2009年5・6月號
山梨・神代桜を詠める | |
神代の光を放つ桜かな | 武蔵 弁慶 |
枯幹の中から生きる老桜 | |
二千年命伝へる桜かな | |
あれなにの声に遠足列乱る | 岩渕 如雨 |
青ぬたや主の郷を問うてみし | |
浅草のにぎはひに入る啄木忌 | |
木の芽風頂き白き山遥か | 小川 修人 |
踊り出す童子のごとく辛夷咲く | |
李咲く微風指揮のシンフォニー | |
夏雲は我が心の底や戦の日 | 合田三鬼堂 |
雨去れば谷中黒猫春歩む | |
異郷に住み異郷を愛し桜花 |

「櫻草」第118號掲載
2009年3・4月號
憂きことをすべて纏めてどんど焚く | 武蔵 弁慶 |
オバマ節拍手喝采春隣 | |
紅梅や前触れもなく咲き満ちて | |
明日の花待たずに君ぞ逝きにける | 岩渕 如雨 |
読みさしの本の重さや春の風邪 | |
誓子忌や一病息災齢積む | |
寒明けや雲の下りてる雑木山 | 小川 修人 |
窓越しの日射しの熱さ寒明くる | |
寒明けや真澄の空に溶くる雲 | |
川風や聖天近き梅の園 | 合田三鬼堂 |
梅の香や人待ち顔の花の歌碑 | |
言問の戦火の跡や梅の花 |

「櫻草」第117號掲載
2009年1・2月號
ふるさとの風に色あり柿簾 | 武蔵 弁慶 | |||||||||||
山紅葉山の匂ひの里にまで | ||||||||||||
今年酒五臓六腑に沁みわたり | ||||||||||||
彼も我も話に尾鰭年忘 | 岩渕 如雨
数へ日や夕焼を背に山座る |
角巻に似た人の目の伏せられて |
冬の虫 |
冬の蜂日の温もりに身を委ね | 小川 修人
| 冬の蝶今を限りと陽に遊ぶ |
残る虫窓辺に鳴けりひとりの夜 |
凍天や恋は気高き二つ星 | 合田三鬼堂
| 凍る手に熱きココア子規好み |
梅の花待つ実は手入れの竹の杖 |
|

「櫻草」第116號掲載
2008年11・12月號
秋晴れて佃の路地や鬼遊び | 合田三鬼堂 |
角乗へ木遣りは響く木場は秋 | |
あきおしむへちまはたなにとうばかり | |
熊野道佳人の姿白芙蓉 | 武蔵 弁慶 |
熊野道定家歌碑あり萩揺るる | |
熊野山古人の浄土野菊の香 | |
待宵や庭園灯のつつましく | 岩渕 如雨 |
我が句さへよしと思はる月今宵 | |
語る夜の温め酒や時もどる | |
黄落や海老茶暖簾の和菓子店 | 小川 修人 |
黄落を独り占めする山の道 | |
不況など何処吹く風と黄落す |

「櫻草」第115號掲載
2008年9・10月號
争ひし故忘れゐて雲の峰 | 岩渕 如雨 |
ありたけの雲を重ねて夏盛る | |
古稀迎ふ同級会や酔芙蓉 | |
自由なれ角川春樹雲の峰 | 小川 修人 |
風来たり北のトマトを丸齧り | |
新涼や鯨とならんちぎれ雲 | |
画学生のひたひに汗みる上野かな | 合田三鬼堂 |
核絶の願ひむなしく葉月尽く | |
一夜とてこの世は仮の蝉しぐれ | |
夏痩せの妻にいいよう操られ | 武蔵 弁慶 |
縞南瓜大葉の下に隠れをり | |
かなかなや天籟の響奏でたり |

「櫻草」第114號掲載
2008年7・8月號
京 都 | |
保津川の飛沫に遠き桐の花 | 岩渕 如雨 |
化野の緑百色石仏 | |
千年紀源氏の庭の早桔梗 | |
赤シャツを迷はず選ぶ更衣 | 小川 修人 |
全身に快き風更衣 | |
細腕に苦笑ひして更衣 | |
大和路の佛帰るや上野夏 | 合田三鬼堂(俊知改め) |
祭終え神馬尿する天下かな | |
紫陽花は王子きつねの通る道 | |
雲の峰天地有情の境地たり | 武蔵 弁慶 |
馬鈴薯や昔の家族子沢山 | |
打水や千代の心を思ひけり |

「櫻草」第113號掲載
2008年5・6月號
曲水や義之が詩作の宴をはり | 武蔵 弁慶 |
山家集繙き偲ぶ西行忌 | |
霾や偏西風に乗りいにしえも | |
千鳥が淵 | |
ボート浮く落花の堀に恋いくつ | 岩渕 如雨 |
日本の風の色づく落花かな | |
頷きて落花の中を車椅子 | |
西行忌 | |
もののふに花の心ぞ西行忌 | 小川 修人 |
今生の花を旅せん西行忌 | |
われもまた花の浄土へ西行忌 | |
三ノ輪梅林寺の碧梧桐の墓 | |
梅咲いて六朝体の墓石かな | 合田 俊知 |
桜満ち学会誌納めの柩閉づ | |
夏の日の暮れて浮びし連の獅子 |

「櫻草」第112號掲載
2008年3・4月號
紅梅の二輪咲きたる狭庭かな | 武蔵 弁慶 |
初春や祖母押す車に孫眠り | |
外人の夫婦神妙初詣 | |
我が生れし日に君逝くや薄紅梅 | 岩渕 如雨 |
夕映えや花と競はずつるし雛 | |
けさ初の話は開く梅一輪 | |
円覚寺 | 小川 修人 |
啓蟄や僧には会はず円覚寺 | |
春浅き山黄昏るる伽藍に灯 | |
時宗の廟所は凛とつちぐもり | |
空を焼き地を焼く三月十日跡 | 合田 俊知 |
鶯のいろはにほへと根岸かな | |
梅の香を黄泉に届けし本門寺 |

「櫻草」第111號掲載
2008年1・2月號
ヒマラヤ紀行 | 武蔵 弁慶 |
秋冷を浴びてヒマラヤ神々し | |
ネパールの山谷に白く十三夜 | |
エベレスト秋空に見て躍動す | |
盛岡にて | 岩渕 如雨 |
旧き友雪冠る山ありがたし | |
雪の碑や十五の春に去りし街 | |
気丈夫な添書年賀欠礼状 | |
信州別所温泉 | 小川 修人 |
茅葺の御堂は大き小春かな | |
コスモスの風に吹かれて足湯かな | |
散落葉三重の塔仰ぎ見よ | |
傀儡に命ふきこむ里祭 | 合田 俊知 |
鶏頭のなほ立つくす冬の庭 | |
足痛のやはらぐ路や石蕗の花 |

「櫻草」第110號掲載
2007年11・12月號
フィリッピンの海から旅する台風裡 | 武蔵 弁慶 |
一つ毎稲穂を集め山となす | |
新米を仙台味噌と味わへり | |
クラス会の案内届くや菊膾 | 岩渕 如雨 |
後の月石割桜つつがなし | |
啄木の城跡暮れぬ蔦紅葉 | |
涼新た竹の葉揺れし子規の墓 | 小川 修人 |
糸瓜揺れる子規庵守るボランティア | |
道灌山面影薄れ昼の虫 | |
獺祭忌道ゆずりあふ狭き庭 | 合田 俊知 |
秋晴れや石段高き街乳山 | |
白金の森秋色深む通り雨 |

「櫻草」第109號掲載
2007年9・10月號
露天風呂入りて一人の暑さかな | 武蔵 弁慶 |
マンションを取り除いてよ遠花火 | |
敗戦の球児の涙秋暑し | |
妻と映るやけどしそうな墓洗ふ | 岩渕 如雨 |
墨鮮しき卒塔婆に秋の蝶 | |
かなぶんの転がりてあり手水鉢 | |
翳す手に散りたる目高また群るる | 小川 修人 |
目高の子無数ミクロの天眼鏡 | |
水草に隠るる目高追ふ目高 | |
足萎えて太陽睨む大暑かな | 合田 俊知 |
五次元の話題に烏揚羽蝶 | |
虚と実の猫遊ぶ夏山房址 |

「櫻草」第108號掲載
2007年7・8月號
子規庵や糸瓜虚空へのぼりゆく | 合田 俊知 |
若冲の石仏訪ひぬ夏盛り | |
肩越しに「受胎告知」見る夏衣 | |
明易や裾に雲置く南部富士 | 岩渕 如雨 |
独り居に何問ひかくる扇風機 | |
日盛や汝の短き影を踏む | |
病癒え故郷旅す花山葵 | 小川 修人 |
風薫る駅に迎への道祖神 | |
白樺の若葉の先は鹿島槍 |

「櫻草」第107號掲載
2007年5・6月號
新樹光坐禅案内墨新た | 岩渕 如雨 |
休酒はや十日になりぬ菜種梅雨 | |
春遅し目路の果なる青信号 | |
城跡に老樹恬然花吹雪 | 小川 修人 |
老人のトランペットに落花舞ふ | |
静まれる禅林宝窟落花かな | |
太宗寺花光背に六地蔵 | 合田 俊知 |
花冷の御苑見下ろす茶房かな | |
四国路の旅の役者の花便り |

「櫻草」第106號掲載
2007年3・4月號
古草や採り残したる畝二列 | 岩渕 如雨 |
畑打つや眠り足らざる虫まろむ | |
ふるさとの話とくとく啄木忌 | |
入院を前に朝風呂冬至かな | 小川 修人 |
麻酔醒め孫の顔見るクリスマス | |
病室の起床は六時初茜 | |
梅が香をほしいがままに諏訪の茶屋 | 合田 俊知 |
太鼓橋手すりによりて梅見かな | |
梅飾る浮世の龍図パリ帰り |

「櫻草」第105號掲載
2007年1・2月號
葺替への寺の瓦に散紅葉 | 岩渕 如雨 |
大き樹の枝を頼まず落葉かな | |
深川に護摩木納むやしぐれ鍋 | |
歳晩の人また人の中にあり | 小川 修人 |
行く年に取り残さるる心地かな | |
而して事なく過ぐる年の暮 | |
地吹雪て蒼白の月走りゆく | 合田 俊知 |
北斎の画業如みし冬櫻 | |
元禄の科白悲しき冬芝居 |

「櫻草」第104號掲載
2006年11・12月號
同人自選句-青萍集
木の実落つ一灯点る露天風呂 | 岩渕 如雨 |
にぎはひは他所に任せてぶな黄葉 | |
学校の予定地のまま乱れ草 | |
箱根路をスイッチバック赤蜻蛉 | 小川 修人 |
ピカソ展見る仲秋の箱根かな | |
露の濃き大涌谷の湯の香 | |
秋の日に色染まりゆく堀の路 | 合田 俊知 |
街路樹の葉落ち現る釣り餌屋 | |
元禄の科白悲しき冬芝居 |

「櫻草」第103號掲載
2006年9・10月號
同人自選句-青萍集
枝豆や帰らざる日の佐渡おけさ | 岩渕 如雨 |
噴水を遠囲みする水草かな | |
ビル風や団扇配りは朱を着て | |
一望の夜景の上を大花火 | 小川 修人 |
花火果て名残の煙漂へり | |
娘らも太鼓を敲く山車の上 | |
プラタナス確と掴めり夏の草 | 合田 俊知 |
川風や花火にくりだす屋形船 | |
帰国した娘の膳や秋刀魚焼く |

「櫻草」第102號掲載
2006年7・8月號
同人自選句-青萍集
母の声聞きたし夏の恐山 | 合田 俊知 |
砂浜に心も投げ出す素足かな | |
回向院あじさい色濃き日暮かな |

「櫻草」第101號掲載
2006年5・6月號
同人自選句-青萍集
一粒の水の叫びや春の滝 | 合田 俊知 |
春来るや業火に耐えし壷一つ | |
江戸城の三の丸址花吹雪 |

「櫻草」第100號
2006年3・4月號
同人自選句-青萍集
初春や古社寺静かや隠れ里 | 合田 俊知 |
人の世を背負ひてのぼる初詣 | |
半蔵門小さく見せし牡丹雪 |

「櫻草」第99号掲載
2006年1・2月號
同人自選句-青萍集
み仏のほおづえついて冬日さす | 合田 俊知 |
古コート親の形見の暖かさ | |
白杖をつきて辿りし七の福 |
誤字、仮名遣いの誤り等に気づかれましたらお知らせください。
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