2010年から15年掲載分です。
※ 2015年分を以て掲載を終了しました。
同人自選句集「青萍集」所載分は別ページにあります。
このページの俳句の配列は「櫻草」掲載順です。
※ 誤字、表記違い等がありましたら、ご連絡ください。

「櫻草」第158號
2015年11・12月號
当季雑詠
実家のなき年齢となりけり秋深し ○ | 岩渕 如雨(
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句趣はいさ仮名を確かむ秋灯 |
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読まぬ本はみ出す書架や文化の日 ○ |
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柿啜るほかに音なき雨夜かな |
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八千草に音を吸はせて夜の雨 |
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山芋の泥にまみれし新聞紙 | 奥山 游悦
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湯冷めする生身の体おそろしき |
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七五三いま人生は上り坂 ○ |
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歌舞伎評見較べてゐる文化の日 |
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鯛焼は尾頭付きの贈り物 |
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恐山の山は閉ざすと冬に入る | 合田三鬼堂
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酔ひどれの足元あやうし雪あかり |
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猟師ゆく雪降りやまぬけもの道 |
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漁船らは流氷を待ちて陸にゐる |
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北国の聖歌聞こえる年の暮 |
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叢雲の朝日を過り雁渡る | 深谷 柏葉
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流星の地球の裏へ急ぎけり ○ |
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かさこそと枯葉追ひくる石畳 |
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城跡は碑一つ冬茜 |
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天の荒び宥め宥めて山眠る |
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学童が家路を急ぐ初時雨 | 武蔵 弁慶
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冬帽をかぶり直して北国へ |
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白鳥来湖にスワンの遊覧船 |
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川岸の岩につかまる木の葉かな ○ |
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山里の景となりたる大根干し |
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課題句:冬紅葉、障子
この世をば燃やし尽くすか冬紅葉 ○ | 游 悦
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石地蔵御座す峠に冬紅葉 |
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色を重ね装ふ一樹冬紅葉 ○ | 如 雨
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ひと雨に色戻りくる冬紅葉 |
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吉野山奥駈道や冬紅葉 ○ | 弁 慶
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空海のゆかりの寺や冬紅葉 |
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冬紅葉色なき山を背負ひけり | 柏 葉
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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たまゆらの日影まばゆき白障子 ○ | 如 雨
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歳時記と障子二枚の別世界 |
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後ろ手に障子を閉めて慟哭す ○ | 游 悦
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猛獣の影絵の迫る障子かな |
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釜の音コトリともせず冬障子 | 柏 葉 |
障子戸の破れに童女の眼かな |
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奥ゆかし恩師の書斎白障子 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第157號
2015年9・10月號
当季雑詠
物問へば短き答秋暑し | 岩渕 如雨
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無月らしきのふの月を惜しみけり ○ |
戦なき七十年の秋高し ○ |
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是非もなし敬老の日の酒二合 |
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風なくも乱るるがよし秋の草 |
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新涼や車掌の右手高々と ○ | 奥山 游悦
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子らの声やがて花野に吸ひ込まれ |
秋晴に身のもどかしや車椅子 |
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浮世絵の廓に遊ぶ夜長かな |
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忍従のあとの御褒美野分晴 |
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海外に戻る子無事か野分来る | 合田三鬼堂
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七十年終戦特集あまた観る |
幽霊に足なく時期ある応挙の忌 |
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名月やうさぎ影濃き光かな |
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パソコンのリカバリーする秋立つ日 |
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錆鮎の炉端あかあか宴闌ける | 深谷 柏葉
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秋扇や琵琶湖に入りし夕日影 |
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朱に混じり朱に染まぬ白曼珠沙華 |
立待の雲に翳りて酔ひ少し |
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街路樹の葉擦れも軽き野分あと |
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山深き寂びれた村に秋灯す | 武蔵 弁慶
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曼珠沙華孤高の母を思ひ出す ○ |
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ふるさとの農家は厄日恐れたり |
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鰯雲海の大漁を祝ふかな |
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秋晴やどこかに帽子忘れたり |
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課題句:水澄む、末枯
水澄みて空に一点千切れ雲 ○ | 柏 葉
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逆さ富士少し白みて水澄めり |
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隅田川広大にして水澄めり | 弁 慶
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山里は湧水溢れは水澄めり |
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水澄むやクレソン光る柿田川 | 游 悦
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いつも来る川も今日から水澄めり | 如 雨
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農村の小さき溜め池水の澄む | 三鬼堂
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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末枯の庭をいたはる夜の雨 ○ | 如 雨
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風はこぶ遠き晩鐘末枯れぬ |
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夕日射す釧路湿原末枯れて ○ | 游 悦
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末枯の崖に残りし津波跡 |
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末枯れて水の流れも静かなり | 三鬼堂 |
末枯れや路地に静かさ戻りけり |
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末枯の人生楽し旅に出づ | 柏 葉
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末枯や放置の車河川敷 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第156號
2015年7・8月號
当季雑詠
沖縄の焼き尽くされし夏至がまた | 岩渕如雨
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いくたびか人見失ふ鬼灯市 |
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青嵐老いて口つく応援歌 |
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流れゆくものみな大き梅雨出水 |
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なに在りし街か日盛る津浪跡 ○ |
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向日葵に心の奥を照らされて ○ | 奥山游悦
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はじらひの少女はじめて浴衣着る |
メールには書ききれぬこと夏終わる |
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忘却を憎むてふ人原爆忌 ○ |
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梨を剥く妻の手つきに見とれをり |
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四万の湯は山分け入りて余花曇 | 深谷 柏葉
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葉桜や宴のあとの濃化粧 |
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城あとの堀を埋むる濃紫陽花 |
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梅雨滂沱国の形の変はりゆく ○ |
念力に頼つて凌ぐ暑さかな ○ | 武蔵 弁慶
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暑からう赤い前掛六地蔵 |
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老鶯やこれが最後と鳴きつづけ |
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☆菜や汚れを知らぬ白さなり |
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生きる意味諭してくれる雲の峰 |
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☆は、草冠に左下が口に耳、その右に戈(ほこ) の字。「☆菜」でどくだみ?。 |
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課題句:天道虫、芙蓉
寸分の隙無き甲天道虫 ○ | 游 悦
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球割れて宙に翔び立つ天道虫 |
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七つ星良き名を得たり天道虫 ○ | 如 雨
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手渡せば背を割るそぶり天道虫 |
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天道虫飛び立つ姿わが励み ○ | 弁 慶
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天道虫葉の先端で右左 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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輝ける生命はひと日酔芙蓉 ○ | 如 雨
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咲き初む芙蓉に朝の風にくし |
芙蓉咲く我関せずと地蔵尊 | 弁 慶 |
白という初めの色や花芙蓉 |
人住まぬ隣の垣根白芙蓉 | 游 悦
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山門の奥に四阿芙蓉咲く |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第155號
2015年5・6月號
当季雑詠
郷愁の月に吠えたり朔太郎忌 | 武蔵 弁慶 |
代掻きを静かに見てる磐梯山 |
一瞬に心躍らす柿若葉 |
プラタナス母校懐かし立夏かな |
ふるさとの名産品や桐の花 | |
人待つや駅の端なる遅桜 ○ | 岩渕 如雨
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木洩れ日の遊ぶ朽ち椅子松落葉
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聞き上手の上司の訃報忘れ霜 |
朝風呂の木桶の響若葉風 |
夏曉の竿に小さきユニフォーム |
砂浜に嬰児立たせて夏来たる
| 奥山 游悦
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五合目の脚の疲れや滴れり |
この淵は我が縄張りと山椒魚 |
地の水を吸ひて浄める水芭蕉 ○ |
行きずりの女性と似たる濃紫陽花 |
都会にも雲は流れる早苗月 |
合田三鬼堂 |
更衣ふ暖簾も替へる若女将 |
釣り堀のすみに売らるる天使魚 |
蕎麦食うて冷酒の季節と覚りけり |
深山の孤高に生きて山楝蛇( |
課題句:茄子苗、夏帽子
下町の茄子苗並ぶ花屋かな ○ | 三鬼堂 |
店頭の上段に並ぶ茄子の苗 |
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実ひとつ付く茄子苗も買ひにけり ○ | 如 雨
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茄子苗に余地は四五本狭庭かな |
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大空の英気を吸つた茄子の苗 ○ | 弁 慶
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農家より分けてもらひし茄子の苗 |
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茄子苗を親しき友に分かちけり | 游 悦
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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夏帽子とりて無住寺由緒書 ○ | 如 雨
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あの人と知れるいつもの夏帽子 |
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嬉々として波際を行く夏帽子 | 游 悦 |
見た目より気分が大事夏帽子 |
旅立ちや頭上に軽き夏帽子 | 三鬼堂 |
一列に散歩の園児夏帽子 |
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追憶の美少女かぶる夏帽子 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第154號
2015年3・4月號
当季雑詠
春めいて香りを捲る新刊書 | 武蔵 弁慶
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素性よき木木が真つ直ぐ山笑ふ |
水温むうしろに人のゐるやうな |
亀鳴くや子は妖怪の夢を見る ○ |
凍てゆるむ黄の花庭に三種ほど | 岩渕 如雨
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薄氷の残り試験の日の暮るる | |
水温む流るる草と歩みけり ○ |
暦では春と伝へて雪予報 ○ |
竹の葉の音の乾きて春寒し |
遺棄されし村をさまよふ牛朧 ○ | 奥山 游悦
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小さき子も翼ひろげて卒業す ○ |
一椀に野の薄みどり蕗の薹 |
我知らぬ妻の少女期桜餅 |
やまくずれ続く町にも初燕 |
啓蟄や古傷静かに思ふとき | 合田三鬼堂
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登りきて上野の山の潅仏会 |
峡谷に豪雪溶けて響くなり |
ビル中に古雛飾る日本橋 |
散策の袖摺坂に春の雨 |
課題句:芹、うららか
朝粥の芹の香満つる仏間かな ○ | 游 悦
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万葉の世界に誘ふ芹の水 |
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幼き日飢ゑに堪へ兼ね芹を摘む ○ | 弁 慶
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芹の香やこれぞ天から授かりぬ |
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畦弛む危ふき腰で芹を摘む | 如 雨
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芹の香やふるさと訛聞くやうな |
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芹摘んで母は戻りし厨かな
| 三鬼堂 |
芹籠や大目に摘んで棚の上 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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うららかや豊かな流れ隅田川 ○ | 弁 慶 |
うららかや唇紅き弁財天 |
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うららかや昼どきに発つ京の宿 | 如 雨
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うららかや間延びせし歌下校の子 |
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うららかや日当る畝に鋤寝かせ | 游 悦 |
麗かや寝そべりて読む昆虫記 |
麗らかな海をもみせるオホーツク
| 三鬼堂 |
うららかや友の名づけし俳句の間 |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第153號
2015年1・2月號
当季雑詠
門松や会津と越後仲間内 | 武蔵 弁慶
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山奥の蕎麦を啜りて年賀かな |
初鳩のくぐもつて鳴く稲荷かな |
冬ざれや友は静かに消え去れり |
初春に人形焼買ふ異邦人 |
みちのくの宿の湯冷めや旅のメモ | 岩渕 如雨
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歳末や落つる籤玉乾く音 |
年立つや小吉ほどの願ひあり |
初競りの喧騒の中魚眠る |
冬ざれや菖蒲田なりし水たまり |
三陸の浜も賑わふ小正月 | 奥山 游悦
|
不愛想な人の集まる焚火かな |
風花や女系家族の旅芸人 |
列島のひれ伏す上に冬将軍 ○ |
髷結ひて広きおでこや松の内 |
課題句:数の子、下萌
数の子を噛めば小樽の波の音 ○ | 游 悦
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音高く数の子を噛み母息災 |
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奥の歯を入れて数の子音軽し ○ | 如 雨
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数の子の黄金を摘み朱盃酌む |
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数の子や真珠のやうな味がする ○ | 弁 慶
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数の子を噛めば噛むほど甘さ増す |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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下萌や人盗りし浜荒るるまま ○ | 如 雨
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下萌や老いに励みの土香る |
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下萌や野外授業の河川敷 ○ | 游 悦
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人住まぬ隣の敷地下萌ゆる |
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大阿蘇の午喜びて下萌ゆる ○ | 弁 慶 |
畦道に生気みなぎり下萌ゆる | |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第152號
2014年11・12月號
当季雑詠
落城の堀をゆつたり冬の鳥 | 武蔵弁慶
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旧火山噴火を止めぬ神無月 |
大仏も孤独なひとり冬の空 |
諍ひも生活の糧冬うらら |
晩菊や老いを自慢の待合室 ○ | 岩渕如雨
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声かけてしばし道連れ野路の秋 |
窓にかかる紅葉でよろし雨湯宿 |
空に浮き今年も柿の熟るるまま |
初時雨人驚かず市の街 |
秋深し次回は決めぬクラス会 ○ | 奥山游悦
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折り鶴の並ぶ縁側小春かな |
ゴム長の跡の残りし冬田かな |
見ぬふりをしても気になる社会鍋 |
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課題句:笹鳴、酉の市
人群れる裸電球酉の市 ○ | 游 悦
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昏れてより人の湧き出す酉の市 |
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客売手みなほろ酔うて酉の市 ○ | 如 雨
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江戸つ子となりたる気もす酉の市 |
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小熊手書斎の窓を飾りけり | 弁 慶
|
下町のうすくれなゐや酉の市 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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笹鳴を隣家に送り夕ぐるる ○ | 如 雨
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笹鳴に話半ばで終りけり |
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笹鳴やギターを弾く手をそつと措き | 游 悦
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笹鳴に心の隙を突かれけり |
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笹鳴に起き笹鳴に眠りけり | 弁 慶 |
笹鳴に地球の平和祈りけり |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第151號
2014年9・10月號
当季雑詠
栗の飯共に白髪の夫婦かな | 武蔵 弁慶
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風評に耐えて里より梨団栗や届く |
団栗や空から落ちる贈り物 |
みちのくにあれば合点の秋立ちぬ | 岩渕 如雨
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声かけてくる人知らず初紅葉 ○ |
今日聞けば秋の声する貝の殻 |
滞りなく終りし葬儀うろこ雲 |
秋声や父母の気配のあるやうで |
浮世絵の廓に遊ぶ夜長かな | 奥山 游悦
|
幾度も部屋に来る母盆休み |
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祖父も踏み父も踏みたる刈田かな ○ |
みちのくの風を孕みて梨をもぐ |
身に入むや壁に残りし津波跡 ○ |
課題句:葉鶏頭、かりん
太陽と地熱を吸ひし葉鶏頭 ○ | 游 悦
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本心をむき出しにする葉鶏頭 |
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今日の日を吸ひて明日燃ゆ葉鶏頭 ○ | 如 雨
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まだ夏の気配と色の葉鶏頭 |
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みどりごの成長見つめる葉鶏頭 | 弁 慶
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葉鶏頭いななき踊る驟雨かな |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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この向きがいい貌ならむくわりんの実 ○ | 如 雨
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傷つきて残されにほふくわりんの実 |
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ゴミ箱のいびつのかりん匂ひ立つ | 游 悦
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見栄えより中身が勝負かりんの実 |
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鬼城師の心伝えるかりんかな | 弁 慶 |
武家屋敷かりんたわわに実りけり |
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上記句の「かりん}は漢字表記ですが、インターネットでは
カバーされていない文字ですので、平仮名にしました。
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第150號
2014年7・8月號
当季雑詠
足音に金魚大きく目を出せり | 武蔵 弁慶
|
わだつみの幾多の墓標終戦忌 |
深き山人生歌ふ青葉木菟 |
ひたすらに生きる毛虫の武者姿 |
捨つべきを捨ててやうやく夏座敷 ○ | 岩渕 如雨
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降り立てば夕虹二重ふたへビルの間あひ |
二番子は声嗄れるまで夏燕 |
今年また人気ひとけなきらし夏館 |
蝸牛ででむしになにも申さじ我に似る |
炎昼や街ゆく人のゆらめきて | 奥山 游悦
|
拍子木の音心地よき夏芝居 |
百までも生きるつもりか百日紅 ○ |
お互ひに本音語らず心太 |
籐椅子に美空ひばりの古写真 ○ |
課題句:雲海、西瓜
雲海の動くと見えて動かざる ○ | 游 悦
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雲海の浮世の些事を覆ひけり |
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雲海を突きて真中に朝の富士 ○ | 如 雨
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雲海の隠すうつつよ夕べには |
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里山は雲海に消え白く映ゆ ○ | 弁 慶
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雲海に浮かぶ孤島や槍ヶ岳 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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西瓜食ふ子らの歯並のうつくしき ○ | 游 悦
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切西瓜口いっぱいの母息災 |
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いくたびか西瓜回してこの一刀 ○ | 如 雨
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西日さす店に戻りて西瓜買ふ |
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西瓜取る少年は我夢の中 | 弁 慶 |
兄弟は並んで無口西瓜喰ふ |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第149號
2014年5・6月號
当季雑詠
茶届くや新しき夏来たるらし | 岩渕 如雨
|
気どらずにたつぷり生姜初鰹 ○ |
職退けば恥ぢず派手めの更衣 |
青山椒片手にわづか余るほど |
老いてふたり気持新たに更衣 ○ |
愛用のギター静かに夕薄暑 | 奥山 游悦
|
太宰忌や上水番屋今はなく |
五月雨や欄干濡れし渡月橋 |
無人駅遠巻きにして蛙鳴く |
葉桜の下をゆつくり老ふたり ○ |
モンゴルの大草原も草萌ゆる | 武蔵 弁慶
|
凡人もさまざま思ふ桜かな |
栗の花身を乗り出して朝日浴び |
高層の団地見上げて田を植うる ○ |
薄暑光一点見つめる稚児の笑み |
課題句:夏場所、雨蛙
夏場所やゆつさゆつさと勝力士 ○ | 如 雨
|
夏場所や花道戻る背の光る |
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夏場所の未来を担ふ序二段 ○ | 弁 慶
|
夏場所が終れば一つ年老いぬ |
|
法被爺触れ回りをり五月場所 | 游 悦
|
大川に寄す夏場所の触れ太鼓 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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昼の日の暗みて歓呼雨蛙 ○ | 如 雨
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いま鳴くはお前か小さき雨蛙 |
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雨蛙輪唱のコツ知ってをり ○ | 游 悦
|
御仏を恋ふやしきりと雨蛙 |
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遊休のプールで泳ぐ雨蛙 ○ | 弁 慶 |
草叢の可愛い玩具雨蛙 |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第148號
2014年3・4月號
当季雑詠
啓蟄や拾ひ残しの豆転ぶ | 岩渕 如雨
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眠りゐし土のぬくみを耕せる ○ |
卒塔婆の古りて彼岸の風に鳴る ○ |
掃き寄せて山なす美形落椿 |
他愛なき諍ひ留まる朧かな |
桃色の仔豚戯れ合ひ春の泥 ○ | 奥山 游悦
|
白酒に酔ふ男とて親しまれ |
一と網を紅色にして桜鯛 ○ |
夜桜や連れあるらしき友を避け |
諍ひもすぐ忘れをり春炬燵 |
大根の干されて里は青い空 | 武蔵 弁慶
|
雪原に鶏卵工場赤い屋根 |
頬つ被り車の雪を振り払ふ |
課題句:東風、朝寝
東風鳴らす絵馬にあまたの願ひごと ○
| 如 雨
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ステッキの軽きを選りて東風の道 |
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桜東風合格の絵馬喜べり ○ | 弁 慶
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強東風に田畑耕す農夫かな |
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強東風に縮む我が身の老いゆくか ○ | 游 悦
|
暖簾に東風の吹く頃新メニュー |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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充電が放電となる大朝寝 ○ | 游 悦
|
さまざまな音過ぎてゆく朝寝かな |
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極楽と言ひてたまさか母朝寝 ○ | 如 雨
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職退きて疾やましくもなし大朝寝 |
|
庄助の愛でし出で湯で朝寝かな | 弁 慶 |
鎌倉の大仏様よ朝寝せよ |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第147號
2014年1・2月號
当季雑詠
手を上げて凍て風の中一輪車 | 岩渕 如雨
|
湯冷めして何か盗られしごとく寝る |
寝ねぬ夜の嫁が君まだ舞台裏 ○ |
しくじればむしろ褒めらる初笑ひ ○ |
歳の市人は淋しき仮面にて |
雪の夜は声ひそやかに読み聞かせ | 奥山 游悦
|
懐炉入れしときより急に老け込みぬ |
会ふことのなきを知りつつ賀状書く ○ |
冬蜂の辿りつきたる三和土かな ○ |
侘助やうつむく母に声をかけ |
暮の秋峠の詩碑の遂に建つ | 武蔵 弁慶
|
木守柿鳥が群がる過疎の村 |
時雨るるや仮設は車動くのみ |
ペットにも七五三とは面白き |
課題句:獅子舞、風花
獅子頭脱ぎて一礼茶髪かな ○ | 游 悦
|
待ちわびし獅子舞の笛まづ聞こゆ |
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獅子の口寄れば燥ぐ子逃げ出す子 | 如 雨
|
獅子舞の笛のみ聞え過ぎにけり ○ |
|
獅子舞に子供も笛に首回す ○ | 弁 慶
|
ふるさとも見られぬ景や獅子頭 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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寺屋根を越え風花の永らへし | 如 雨
|
風花や高き墓苑に父母眠る ○ |
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風花やごぜの行きしはこの道か | 游 悦
|
風花や被災現地に寄らで過ぐ |
|
風花や戊辰の役の鶴ヶ城 | 弁 慶 |
風花や海の匂ひの震災地 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第146號
2013年11・12月號
当季雑詠
いなご採り小遣稼ぎなつかしき | 武蔵 弁慶
|
亡き母と二人土間での胡桃割り |
若人の大きなリュック鰯雲 |
千枚田踊る娘の案山子かな |
風音に草の色消す暮の秋 ○ | 岩渕 如雨
|
痛きほどの拍手届かず神の留守 |
店の灯の消えて芋焼く火の赤し |
海鼠腸このわたの土産夜更の独り酒 |
盛大な拍手まで待つ堪へ咳 |
短日や古書店巡る急ぎ足 | 奥山 游悦
|
銀杏を拾ふ女将の手際よき |
遠山の見ゆる軒端の柿すだれ |
百薬に勝る漁師の根深汁下 |
いくたびも同じ唄聴く秋灯 |
課題句:マスク、北風
集団で大きなマスク登校す ○ | 弁 慶
|
マスクして喜怒哀楽も隠すかな |
猛き人もマスクかければ大人しく ○ | 游 悦
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先生も生徒もマスクもどかしや |
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マスクとり鉢の蕾を比べみる ○ | 如 雨
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唇を噛むを隠せるマスクかな |
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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遊ぶ子の声も運びし北の風 ○ | 游 悦
|
北風に身を縮めゐる仔猫かな |
|
北風や今なほ父の諭す声 ○ | 如 雨
|
北風やとほき縁ある墓一基 |
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北風や古き酒蔵窓一つ ○ | 弁 慶 |
北風に寺の大楠動かざる |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第145號
2013年9・10月號
当季雑詠
炎天下白黒の傘オンパレード | 武蔵 弁慶
|
山里の温泉宿や藍浴衣 |
夏草や被災地今も真つ平 |
万緑や命あるもの生き返る |
バスの窓今朝も大きく花芙蓉 | 岩渕 如雨
|
浜町の空には小さき後の月 |
蜻蛉の尻打ち残す波紋かな |
年ごとに朝顔小さく独り住み |
良夜かな花開くごと草光る |
朝露に濡れし黒髪見初めたり | 奥山 游悦
|
来し方と行く末語る良夜かな |
虫飼ひて地球の歴史垣間見る
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みちのくの優しさ強さ萩の花 ○ |
一言をまづは抑へて梨を剥く ○ |
課題句:夕月夜、秋晴
そのときのあなたの笑みや夕月夜 ○ | 游 悦
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屋形船行き交ふ小川に夕月夜 |
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告白の小暗き道や夕月夜 ○ | 如 雨
|
さざ波の散らす光の夕月夜 |
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夕月夜世の浮き沈み見つめたり ○ | 弁 慶
|
夕月夜なつかしき日と思ひ出す |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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秋晴と老母を乗せて愛車行く ○ | 游 悦
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国後を抱く知床や秋晴るる |
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秋晴や同じふるさと語りをり ○ | 如 雨
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塔高く白雲を突く秋日和 |
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秋晴のどこかに帽子忘れ去る ○ | 弁 慶 |
秋晴や喜び溢れ富士の山 |
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○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第144號
2013年7・8月號
当季雑詠
観音の慈愛に触るる若葉風 | 武蔵 弁慶
|
崖からの滴る水も海原に |
働かぬ輩もゐるや蟻集団 |
夏めくや匂ひをめくる新刊書 ○○ |
喜びの地から新茶の届きけり |
背の高き雲背伸びして梅雨明くる ○ | 岩渕 如雨
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宙に会ひ命またたく螢かな |
杉暗き滴りの壁立石寺 |
義母忌日寺屋根光る夏の月 |
しばらくは供へて置かむ早桃かな |
日のさすや庭木の影も秋めきて | 奥山 游悦
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目標は大きいがよし夏休 |
青空の重さを乗せて夏帽子 ○ |
蜘蛛の井を逃れんとする命かな |
渓流の眺めも馳走夏料理 |
課題句:生身魂、水中花
年齢訊かれ真顔になりぬ生身魂 | 如 雨
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生身魂いただきましたと酒五勺 ○ |
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みちのくに独り暮らすや生身魂 ○ | 游 悦
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今もなほ折り紙師範生身魂 |
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目と耳のほかは健やか生身魂 ○ | 弁 慶
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抜歯して演技にかける生身魂 |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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誰からも見え誰も見ぬ水中花 ○ | 游 悦
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水の中怖ひものなし水中花 |
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水中花ファンタジーの世界なり ○ | 弁 慶 |
人生の華麗さ競ふ水中花 |
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水中花昔の夢のごと開く ○ | 如 雨
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水中花をつつみし水の美しさ |
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○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第143號
2013年5・6月號
当季雑詠
手で掬ふお玉杓子は幻か | 武蔵 弁慶
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観梅の翁しつかり歩きけり |
雷門提灯揺らず春一番 |
バチカンに白煙上がり涅槃西風 |
夏めくや雲の姿のゆたかなる | 岩渕 如雨
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夏燈恋とは言へぬこひ語る |
人がやや避くるかと見ゆサングラス ○ |
あやかりて少し薬缶の祭酒 |
筆ペンの般若心経夏書かな ○ |
辛いことすべて忘れてこどもの日 | 奥山 游悦
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恐竜は今も大好き柏餅 |
祖父も見し父も眺めし植田かな ○ |
平泳ぎ立ち泳ぎあり森林浴 |
課題句:薄暑、短夜
今日もまた篠笛聞こゆ夕薄暑 ○ | 游 悦
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豪華船見送る岸に薄暑光 |
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土の手を洗ふしぶきや夕薄暑 ○ | 如 雨
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忘れしを忘るる日なり薄暑かな |
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人も皆宇宙のかけら薄暑光 | 弁 慶
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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短夜やはらから語り尽くるなし | 如 雨
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明易や惑ひしままに夢の果て |
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短夜や明日の段取り決めかねて | 游 悦
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短夜や余生いくばくショパン聞く |
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短日や塔に傾く山の月 | 弁 慶 |
短日や虚ろな気分さらに増し |
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第142號
2013年3・4月號
当季雑詠
雪見れば何もいらないゆたかなり ○ | 武蔵 弁慶
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初場所の旗がひらめく隅田川 |
山頭火生死の中に雪降れり |
雪吊の松が鎮座す心字池 |
赤飯の香の門にあり合格す | 岩渕 如雨
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生ひ立つは誰の記念樹雛の家 |
若人の別れは飛躍三月尽 |
白髪に枝垂れて触るる桜かな |
春昼や小さき影に追ひ越さる ○ |
大声で唱歌合唱卒業す ○ | 奥山 游悦
|
山焼くや農夫らの目の油断なく |
下萌や津波跡地に子ら遊ぶ |
病み上がり空を見たくて青き踏む ○ |
三陸の海かげろひて貝ひろふ |
課題句:日永、白酒
読みさしの本重ねをり日永かな ○ | 游 悦
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永き日や長居気にせぬ見舞客 |
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永き日や路地に昔の遊びなく ○ | 如 雨
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鳴りつづく呼出音の日永かな |
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永き日を待ちに待ちたる観覧車 ○ | 弁 慶
|
永き日の朝日がつなぐ生きること |
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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白酒は古き良き日のなごりかな | 弁 慶 |
在りし日の父母を偲びで白酒酌む |
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今日だけは下戸も拒まぬお白酒 | 游 悦
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白酒や無口の父も旨さうに |
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白酒に備へ頬紅もう一度 | 如 雨
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○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第141號
2013年1・2月號
当季雑詠
侘助の藁に包まる八幡宮 | 武蔵 弁慶
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雁来るどんなみやげを携へて |
空つ風街路の塵を払ふのみ |
母作る冬至南瓜の愛思ふ |
冬の旅我はみちのくまづ目指す ○ |
捨てきれず隅に本積む年の暮 | 岩渕 如雨
|
繰言は言はずと決めて今朝の春 |
手焙や神札所の人途切れたる |
小吉に不平などなし初神籤 |
襷継ぐ笑むも叫ぶも息白し ○○ |
短日や古書店巡り切り上げて | 奥山 游悦
|
寒月や身を寄せ合うて影二つ |
そこだけは掃き残したき柿落葉 |
いつまでも生きる気がして寒卵 ○○ |
正月や仮設住宅人気なく |
課題句:左義長、かんじき
どんど祭久しく会はぬ友のゐて ○ | 游 悦
|
どんどの火顔てらてらと闇に浮き |
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火の柱崩れ響くどんど祭 | 如 雨
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惜しさうに達磨投ずやどんどの火 |
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煩悩も憂きも一緒にどんど焚く | 弁 慶
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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かんじきやみな年寄の歩むごと | 如 雨
|
かんじきで行くは忍者か疾うに消ゆ |
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かんじき※の跡の消えゆく森の奥 | 游 悦
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かんじき※の跡並びをり親子らし |
かんじきで聴く新世界シンフォニー | 弁 慶 |
※ <木偏>に<累>の漢字ですがwebでは出ませんので ひらがな表記にしました。 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第140號
2012年11・12月號
当季雑詠
呆気なきひとり昼餉のとろろ汁 | 岩渕 如雨
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撫でられて光る牛像宮の秋 |
昏れ初むる頬杖の窓一葉散る |
実を枝にいのちまつたう柿落葉 ○○ |
音も香も変らぬ城の落葉風 |
北風や黙々として太極拳 ○ | 奥山 游悦
|
冬木立抜けて再び冬木立 |
冬晴を待ちて物干す団地かな |
しあわせの匂ひ孕みて干布団 |
新走言葉少なき友と酌む |
屋敷林苅田の原に凛として | 武蔵 弁慶
|
秋祭抜けきて静寂大学門 |
われひとり媚びぬ人生吾亦紅 |
課題句:神の留守、煤拂
神主の背広姿や神の留守 ○ | 游 悦
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いさかひは当分自粛神の留守 |
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大岩の縄色失せて神の留守 ○ | 如 雨
|
掃き寄せて参道狭き神の留守 |
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荒潮の岬の宮や神の留守 | 弁 慶
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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踏台のおぼつかなきや煤拂 | 游 悦
|
煤拂見守るだけの歳となり |
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僧侶みな尊き大仏煤拂 | 弁 慶
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見向きせぬ古き地球儀煤拂 | |
煤拂高きにありぬ古手紙 | 如 雨
|
物寄せて発見のある煤拂 | |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。
「櫻草」第139號
2012年9・10月號
当季雑詠
雲の峰やうやう遂げし逆上り | 岩渕 如雨
|
酷使せし五臓に礼を言ふ残暑 |
十六夜や今日から妻も老いはじむ |
独り居や声なきうちに星流る |
夕されど一句も成さず西鶴忌 |
打ち水や土の匂ひの立ちのぼり | 奥山 游悦
|
星祭恐竜の名が書かれをり |
天高し広場の合唱声高し |
秋嶺を胸一杯に吸ひ込みて ○ |
新涼や社員の顔も引きしまり |
飛魚のしきりに飛ぶや伊豆の海 | 武蔵 弁慶
|
噴水の飛沫の光る芝生かな |
片蔭に乳母車入り子の笑顔 |
夏山に古稀の挑戦歩の弾む |
歳三の傷いやし湯や月見草 |
課題句:月、秋の風
古稀過ぎし身に優しきや夜半の月 ○ | 游 悦
|
無人駅下車して近き月の宿 |
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夕月夜差し込む狭庭方丈記 | 弁 慶
|
満月の出でてカーテン明け放す |
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我病むを上れる月に語りけり | 如 雨
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出湯宿月ある部屋に寄合ひて |
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
そばに人あれと思ひぬ秋の風 | 如 雨
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秋風や太字の術後注意書 |
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クラス会間遠となりぬ秋の風 | 游 悦
|
朝散歩チョッキで凌ぐ秋の風 |
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行方なき瓦礫の山に秋の風 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第138號
2012年7・8月號
当季雑詠
武蔵野は薄墨の雲桜桃忌 ○ | 岩渕 如雨
|
幼名で呼ばれしは夢昼寝覚 ○ |
注文を替へて生簀の鯵とゐる |
結局はそれで結構冷奴 |
夏帽の中を拭ひて池之端 |
宵闇に思ふこと言ひ出せぬまま ○ | 奥山 游悦
|
自転車を夏野に寝かせ水辺まで |
夏霧や幣舞橋にたどりつき |
運動会だけは英雄いつもの子 |
我が家には勿体なきや棕櫚の花 |
サングラス日食を見る目となりし | 武蔵 弁慶
|
白鷺の静かに歩む我もまた |
黒南風をしかと受け止めスカイツリー |
課題句:金魚、踊り
マンションの水の宇宙や金魚鉢 | 游 悦
|
ワルツ聴き身をひるがへす金魚かな |
|
はしつこにゐて難逃る金魚かな ○ | 如 雨
|
藻を潜り金魚逆立ち宙返り |
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足音でにつこり顔出す金魚かな | 弁 慶
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
一昨年は笑顔揃ひし盆踊 | 如 雨
|
初めての化粧は淡く盆踊 |
気の合はぬ奴の踊の巧みなる | 游 悦
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ほろ酔いの吾も飛び込む踊の輪 |
都会でも踊の落ちは炭坑節 | 弁 慶 |
湯の町の湯の香の匂ふ踊かな |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第137號
2012年5・6月號
当季雑詠
世直しの兆を告げる春一番 | 武蔵 弁慶
|
国境の谷に一筋春の川 |
高空と花を従へ天守閣 | 岩渕 如雨
|
転移なしと告げらる帰途の桜まじ |
一盞に酔ひて愛しき山ざくら |
白黒の写真にてよし夕燕 |
長閑さや調子はづれの笛とほる |
洋間から妻のソプラノ夕薄暑 | 奥山 游悦
|
植田より日本再生匂ひ立つ ○ |
離れつつ近づき離れ糸蜻蛉 |
やうやくに玉の蛤つかまへり |
課題句:牡丹、蟻
折れさうで折れない牡丹七重八重 | 弁 慶
|
独り咲く廃寺の牡丹気高くも |
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静夜かな牡丹に炎あるごとし | 如 雨
|
長谷寺に百花こぼれる牡丹かな | 游 悦
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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習ひたるやうに墓苑の蟻の道 | 如 雨
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日に乾く蚯蚓を引きて蟻の汗 |
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塾帰り子ら騒ぎをり蟻の列 | 游 悦
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茣蓙敷けば蟻の斥侯ごあいさつ |
|
いにしへの吉野詣や蟻の列 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。
「櫻草」第136號
2012年3・4月號
当季雑詠
水琴の心耳を澄ます冬社 | 武蔵 弁慶
|
河川敷やどなし人や福寿草 |
安達太良の本当の空日脚伸ぶ ○ |
雪掻いて守り本尊詣けり |
竜宮の江の島駅やおでん酒 |
自転車の漕ぎ足速し春の雪 | 岩渕 如雨
|
春一番この止り木に去年も在り |
掌に受けし鶯餅の重さかな |
復興に憂ひ残して鳥帰る |
みちのくといふ店に入る三・一一 ○ |
植木屋の梯子降りくる春の雷 | 奥山 游悦
|
片栗の花に顔寄せ母と子と |
塀高き隣の屋敷藤の花 |
三月の悪夢忘るや嬰の笑み ○ |
竜飛崎風吹き渡り鳥帰る |
課題句:涅槃、朧
かりそめの生命重ねて涅槃の日 | 如 雨
|
目つむれば涅槃絵図より声のする | 游 悦
|
百姓の作付いかに涅槃の会 | 弁 慶
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
原発に見放されたる牛朧 | 游 悦
|
下校時の告げるチャイムの音朧 |
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汝が影を追ひし日ありき星朧 | 如 雨
|
厄介なことを朧に捨てに行く |
|
露天風呂迫り来る山朧かな | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第135號
2012年1・2月號
当季雑詠
珊瑚草まだ見ぬ装い夢に見る | 武蔵 弁慶
|
足るを知る心がありて栗の飯 |
晩秋や舟遊びなき隅田川 |
綿虫やふわりと禍福受け流す ○ |
残されし蜂の飛ぶなり花八手 | 岩渕 如雨
|
鰭酒の青き炎と遊びけり ○ |
忘れゐし礼状いくつ年の暮 |
寄りてゐし顔は四方に置炬燵 |
明六ツの昏きに覗く嫁が君 |
魚市の声の明るさ春近し | 奥山 游悦
|
人恋し風あるらしき焚火かな |
初詣固まつて行く社員たち ○ |
古稀となる身は逆らはず春の風邪 |
駅伝と並んで走る童かな |
課題句:若水、猫柳
若水や老いしといへど年男 | 如 雨
|
若水で淹れし茶に立て茶の柱 |
|
城跡の若水を汲むおらが春 | 弁 慶
|
古井戸の若水汲んでくちそそぎ |
|
若水を汲んで息災祈りけり | 游 悦
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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子ら遊ぶ風に戯る猫柳 | 游 悦
|
雨晴れて水に映るは猫柳 |
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ねこやなぎ盛岡なまりやはらかし ○ | 如 雨
|
みちのくに季節めぐりて猫柳 |
|
猫に似ず誰が名づけしか猫柳 | 弁 慶 |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第134號
2011年11・12月號
当季雑詠
ふるさとを捨てる子らあり秋立ちぬ | 武蔵 弁慶
|
天の川神秘の世界とこしへに |
かなかなの悲壮な響き奏でたり |
安達太良の智恵子の空や銀河澄む |
露草や目立たぬ装ひ母の影 |
その色は何想ふらむ曼珠沙華 ○ | 岩渕 如雨
|
牧水忌迷はず頼む温め酒 ○ |
上州は穏やかな風蕎麦の花 |
白も青もやさしくなりて秋の空 |
走り書く句帖に明き小望月 |
課題句:落葉、日向ぼこ
散華なる落葉の中を歩きけり | 弁 慶
|
落葉にも除染必須のときとなり |
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かの匂ひ法度となりし落葉焚く ○ | 如 雨
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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日向ぼこ夢寐に血滾る頃の我 ○
| 如 雨
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思ふことみな淡くして日向ぼこ |
カール・ブッセ口遊みつつ日向ぼこ
| 弁 慶
|
至福かな愛読書手に日向ぼこ |
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第133號
2011年9・10月號
当季雑詠
夏の海幾多の命彷徨へる | 武蔵 弁慶
|
片付かぬ瓦礫の匂ふ青嵐 |
鬼灯の橙を愛でるや出雲さん |
袋もちトマトを採るや夕間暮れ |
義捐金届けて嬉し二重虹 |
みちのくの祭に軽き旅鞄 | 岩渕 如雨
|
真向ひに見なれぬ客や冷し酒 |
労はることなき務め蝉しぐれ |
「冬蜂」を好む句に選る大暑かな ○ |
目黒路は秋刀魚の煙俄寄席 |
長き夜律儀な姪の電話かな | 奥山 游悦
|
新涼や栓をひねれば水白し |
こんなにも子供をりしか秋祭 |
三陸の海を照らせり星月夜 |
鈴虫を育てる親に育てられ ○ |
課題句:蟲、紅葉
蟲の声無常の響き奏でけり | 弁 慶
|
太古より変はらぬ合奏蟲時雨 |
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夜の狭庭大音声の虫世界 | 游 悦
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虫売に値引を頼む童かな |
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最後尾電車を待てば昼の虫 | 如 雨
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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幾度目と知らずまた来ぬ京紅葉 | 如 雨
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破れ傘さし紅葉浮く露天風呂 |
伏流水抱く里山紅葉せる | 弁 慶
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早起きのごほうびたるか初黄葉 | 游 悦
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第132號
2011年7・8月號
当季雑詠
飯豊の噴井が醸す銘酒かな | 武蔵 弁慶
|
風評に負けず一家の袋掛 |
油虫巨象に負けぬいのちかな |
研修の窓覗き込むほととぎす |
寄りてゐし兎離るる薄暑かな ○ | 岩渕 如雨
|
雨もよし黴香の書など改めむ |
主逝きし庭の青葉のほしきまま |
十薬を美しと見き病み居れば |
釣堀の眠き水面の水馬 |
瓦礫から立ち上がりたる昭和の日 ○ | 奥山 游悦
|
老い涼し断捨離あとの書棚かな |
サングラス優しき嫁も恐くみえ |
職退きて素足で過ごす一ト日かな ○ |
滝飛沫浴びて船行くナイヤガラ |
課題句:日傘、七夕
絵日傘を傾げて長き立話 | 如 雨
|
ゆつくりと産院の前日傘過ぐ |
|
白黒と選びあぐねる日傘かな | 弁 慶
|
鶴首してバス待つ佳人白日傘 |
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妻の持つ日傘に半身隠しけり | 游 悦
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
短冊に余る願ひの星祭 ○ | 如 雨
|
飾る街外れて明き二星かな |
四世代集ひて祝ふ星祭 | 游 悦
|
七夕の願ひ夜空に散りばめて |
山の湯の清らに澄みて星祭 | 弁 慶
|
○ 印は佳句とされたもの、選評に取り上げられた作品等です。

「櫻草」第131號
2011年5・6月號
当季雑詠
街燈の羞ひ点る春茜 | 岩渕 如雨
|
妣の文下書のまま啄木忌 ○ |
ふらここや口笛覚えはじめし子 |
短夜や硝子戸叩き猫帰る |
桐咲けば娘の歳を問はればや ○ |
三陸の孤島に残る風車 | 奥山 游悦
|
底知れぬ地震の揺らぎや夏浅し |
世の末はかくの如きか春の地震 |
津波去り希望の燕飛来せり |
鳥帰る地震の日本を忘れまじ ○ |
御柱天空を突く花曇 | 武蔵 弁慶
|
陽炎や幻の世を見るごとし ○ |
万人の露命呑み込む春の波 ○ |
蒲公英や里にひつそり生きてをり |
課題句:余花、祭
余花の野や一期一会の境地なり ○ | 弁 慶
|
熊野古道光を放つ余花の中 |
|
余花ありて深山の宮の屋根に散る | 游 悦
|
余花の旅辿りつきたる故郷かな |
|
法名碑に母の名加ふ余花曇 | 如 雨
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
この街は蛍を追ひし田圃にて ○ | 如 雨
|
明滅の代る代るに恋蛍 |
原発に代へて百万蛍の火 | 游 悦
|
こはごはと蛍に触れる幼かな |
放物線曲線描く蛍かな | 弁 慶
|
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第130號
2011年3・4月號
当季雑詠
この年も並で終れよ初神籤 | 岩渕 如雨
一床の空きて寒九の夜となりぬ |
| 住む人も忘れしごとき冬座敷 |
| 冬晴の更地の家や母忌日 |
| 節分や鬼は神なり鬼も内 ○ |
| 干潟見て津波を想ふ齢かな | 奥山 游悦
| 年経るも目元涼しき雛かな |
| もう一度机に触り卒業す ○ |
| 春の夜やウクレレ復習ふ妻のゐて |
| 陽炎や古地図片手に奈良を行く |
| 御降りや陸の孤島で空仰ぐ | 武蔵 弁慶
| 氷柱をも口に含んだ幼き日 |
| 自分史の下書きはなし筆初 |
| | |
課題句:春の水、花見
春の水釣糸沈め魚信待つ ○ | 游 悦
|
林泉を探して歩く春の水 |
|
春の水岩を選びて下りけり | 如 雨
|
春の水吾は本格野良仕事 | 弁 慶
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
足病みて傘杖に謝し桜狩 | 如 雨
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花を見て世を怒りたる人多き |
|
新入りの顔も交じりて花筵 | 游 悦
|
人生の至福ひととき桜狩 | 弁 慶
|
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第129號
2011年1・2月號
当季雑詠
うつくしき命のままに紅葉散る | 岩渕 如雨
|
障子閉ぢ締切近き句を敲く |
|
雪吊をつつみて速き入り日かな |
|
冬帽を加へて旅荷整ひぬ |
|
幼木も負けじとひとつ返り花 |
|
風呂吹きや遠き昔の母の味 | 奥山 游悦
|
自分史を書き始めたき冬籠 |
|
ほろ酔ひの醒めて気がつく寒波かな |
|
置き忘れたる手袋のまだぬくき |
|
水仙の沖に向かひて歌ふごと ○ |
|
行く秋やうつむく少女終電車 | 武蔵 弁慶
|
ふるさとの刈田やさしく吾を迎へ |
|
秋黴雨山寺の道ゆつくりと |
|
凩やシベリヤの鬼荒狂ふ |
|
北一輝眠る不動尊木の葉舞ふ |
| |
課題句:御降、猫の恋
御降りはあまねく大地濡らしけり | 游 悦
|
御降りは宇宙と吾を結ぶ糸 |
|
御降に北斎の不二仰ぎ得ず | 弁 慶
|
御降に配達を待つ無聊かな | 如 雨
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
狭庭さへ戦場 となり猫の恋 | 如 雨
|
恋猫の勾玉のごと寝ねにけり |
|
寝入るのを待ちているらし猫の恋 | 游 悦
|
飼い猫に聞かせたくなき猫の恋 |
|
猫の恋吾は関せず野良仕事 | 弁 慶
|
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第128號
2010年11・12月號
当季雑詠
六地蔵耳を澄ましてきりぎりす | 武蔵 弁慶
|
それぞれの弁当競ふ運動会 |
|
団栗や童詩の世界醸し出す |
|
供へらる菊を見上げて去来墓 | 岩渕 如雨
|
啄木の追はれし里の残り柿 |
|
群咲きてむしろさびしき野菊かな |
|
道ひとつ違へば暗し秋祭 |
|
銘を問ひぬるめを頼む温め酒 ○ |
|
早々と店仕舞ひする冬隣 | 奥山 游悦
|
黄落のラインを下る異国旅 |
|
沖遠く消えてしまいひし渡り鳥 |
|
晩菊の色をとどめし地蔵尊 |
| |
課題句:紅葉狩り、枯木
乗りだしてトロッコの窓紅葉狩 | 如 雨
|
老いの身に余る贅沢紅葉狩り | 游 悦
|
紅葉みち歩めば心燃えにけり | 弁 慶
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
夕焼の金の枯木を造りけり | 如 雨
|
家並に淡き影おく枯木山 |
|
街路樹の枯木となりて道真直ぐ | 游 悦
|
凛として蒼天に立つ枯銀杏 |
|
新生の胎動はらむ枯木山 | 弁 慶
|
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第127號
2010年9・10月號
当季雑詠
去る人に思ひ伝へず落し文 | 武蔵 弁慶
|
湯の町の湯の香にほへる踊りかな |
|
デザートに趣味の三角切り西瓜 |
|
キャッチする球児の安堵日焼顔 |
|
紫陽花や高校性だけのローカル線 |
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黒雲を怖れず高き立葵 | 岩渕 如雨
|
夏灯従兄弟再従兄弟の集ひし日 |
|
旅終へぬ酒冷えをれば妻も飲む |
|
行く道の光犇く大暑かな |
|
もぎたてを目から味はふ秋茄子 | 奥山 游悦
|
濃紺の海に染まりし秋刀魚かな |
|
応援歌声張り上げて秋暑し |
|
新蕎麦を打つ手鮮やか旅土産 |
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無花果を丸ごと食べて母元気 |
課題句:秋思、蜻蛉
海暮れて釣具をたたむ秋思かな | 游 悦
|
旧友に会ひて深まる秋思かな |
|
薄翅のひとつ落ちゐて秋思かな ○ | 如 雨
|
蹲る思考の人の秋思かな | 弁 慶
|
‥‥‥‥‥‥‥‥ |
|
水を打つ尾の輝きや銀やんま ○ | 如 雨
|
佇ちをれば道案内の鬼やんま |
|
大空の先端好む蜻蛉かな ○ | 弁 慶
|
宇宙人に似たる複眼鬼やんま |
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ついと来てふいと飛び去る蜻蛉かな | 游 悦
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こはごはと蜻蛉に触れる幼かな | |
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第126號
2010年7・8月號
当季雑詠
寂れ村昔は繭が生き生きと ○ | 武蔵 弁慶
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石楠花を竹馬の友と愛でり合ふ |
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ダービーや一瞬どよめき |
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しやがみ込み雑草とるや薄暑光 |
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観光船傾け逃ぐる卯浪かな | 岩渕 如雨
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馬鈴薯イモ の花うす紫の闇に消ゆ |
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今年竹軒に届きて切られけり |
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神様はいずこにおはす町祭 |
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工房のガラス職人汗しとど | 奥山 游悦
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合いづちに代へてうなづく団扇かな |
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通院の身をいとほしむ大暑かな ○ |
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課題句:夏燕、端居
暮れなづむ路に一閃夏燕 | 如 雨
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鍵型の路地を難なく夏燕 ○ |
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ナイヤガラ飛沫の中へ夏燕 | 游 悦
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徳之島騒動よそに夏燕 | 弁 慶
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夕端居妻のハミング聞えけり | 游 悦
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端居する子の横顔の大人びて |
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休酒日と決めて長びく夕端居 | 如 雨
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知恵なくも世の中憂ふ端居かな |
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古民家の障子外して端居風 | 弁 慶
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○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第125號
2010年5・6月號
当季雑詠
白魚やひた向き生きる命あり | 武蔵 弁慶
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ふるさとの原野に残る別れ霜 |
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矍鑠を願つてひとり畑を打つ |
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病み居れば分厚き花見案内来る | 岩渕 如雨
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庭に出て猫すぐ帰る別れ霜 |
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日の没るやいよいよ白し花辛夷 |
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春暖や入り日を映す轍水 ○ |
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迫り出して川面に競ふ桜かな |
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遊ぶ子の声の弾けて夏来る | 奥山 游悦
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緑陰に裸婦の浮き出るルノワール |
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釣堀に古稀の一ト日を過ごしけり |
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込み入つた話さておき生ビール |
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花冷や続きて友は黄泉の国 |
課題句:祭、杜若
綿菓子の列の長さや町祭 | 如 雨
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早々と祭衣装の朝餉かな |
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気もそぞろ祭囃子の果つるまで | 游 悦
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里山の天まで届く祭笛 | 弁 慶
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お目当ては池に群咲く杜若 | 游 悦
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目に優しほとかたまりの杜若 |
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みどり児のいとけなき笑み杜若 | 弁 慶
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はなびらの揺れて揺るがぬ杜若 | 如 雨 |
○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第124號
2010年3・4月號
当季雑詠
昭和史に己を重ね年迎ふ | 武蔵 弁慶
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冬将軍墨絵の世界描きけり |
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おでん屋の灯り暖か誘はるる |
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黒髪も茶髪も真面目恵方道 |
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宵星を連れて褪せゆく冬茜 | 岩渕 如雨
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日短や昼残したる握飯 |
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失せ物はいづれ出づべし蜜柑剥く |
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低唱の寮歌の過ぎて冬木立 |
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吹き渡る風の大地や麦青む ○ | 奥山 游悦
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森繁の恋ふ知床に残る雪 |
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校庭のチャイム終りて卒業す |
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大空へ道をたがはず鳥帰る |
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課題句:春の山、日永
おほらかに生きよと教ふ春の山 | 游 悦
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憂きこともすべて忘れむ春の山 |
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生れ出づ小さき水音春の山 | 如 雨
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田圃道遠くを見れば春の山 | 弁 慶
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甲高き声路地にある日永かな | 如 雨
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己が影追ひて日永の一万歩 |
寂れ町昔変はらぬ日永かな ○ | 弁 慶
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鳥獣の水に親しむ日永かな |
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物売りの声の遠のく日永かな | 游 悦
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○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。

「櫻草」第123號
2010年1・2月號
当季雑詠
冷泉の世界に触れていちよう散る | 武蔵 弁慶
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夜なべする母の面影今もなほ |
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小春日やラーメン啜る蔵の町 |
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合掌の屋根を染めゐる赤紅葉 |
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山門を抜けくる落暉日短し | 岩渕 如雨
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落柿舎の柿を写して旅終ひ |
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ひと雨に半身を削る紅葉かな |
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室咲の花の憐れや友の逝く |
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頼みたきことまた増えて神の留守 |
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お目当ての大樹に触れて秋深し | 奥山 游悦
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何事か言ひ残したき返り花 |
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菰まとひ小さく笑むや寒牡丹 |
課題句:雪、日脚伸ぶ
見苦しきものみな消えて雪の朝 | 游 悦
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街灯に体当たりする吹雪かな |
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中天を分けるクレーンやしづり雪 | 如 雨
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信号の赤を過ぎりて雪しぐれ |
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豪雪や己の心鍛錬す | 弁 慶
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‥‥‥‥‥‥‥‥ |
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日脚伸ぶ山椒の棘影定か | 如 雨
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物買うて帰路は急がず日脚伸ぶ | 游 悦
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ビルの影避けて歩むや日脚伸ぶ | 弁 慶
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○ 印は佳句とされたもの、作品の選評があったもの等です。
村上谿聲主宰の句は巻頭句などの掲載がありますが、除いています。
誤字、仮名遣いの誤り等がありましたらお知らせください。
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※ 2006年から2009年分を別ページに分割しました(2013.01.05)。
<『櫻草』掲載記事>
如雨の「啄木雑想」